第331話ちょっとキスしていい?

セレーナはすぐには答えなかった。

ファウストを見る。

彼に会うのはこれで二度目だった。初めてのときと同じく、相変わらず洗練されて礼儀正しい。まるで、彼女に悪意など一切ないと言わんばかりに。

だがセレーナは、眼鏡の奥に潜む抜け目のなさを見逃さなかった。

キャリントン家の人間で、抜け目のない者がいないとでもいうのか。

セレーナはふいに微笑んだ。

その意味を読み取れなかったのだろう、ファウストは探るように声をかけた。「ロスウェル嬢……?」

セレーナは冷ややかに言った。「キャリントン氏は、五年前のことを覚えていらっしゃいますか。キャリントン・グループがロスウェル・グループの提携提案を拒否...

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